高齢者を支える上で大事な心構え

介護士の仕事の目的とは、日常生活に支障をきたしている人を、できるだけ支障のないスムーズな生活に近づけることにあります。

ここで言う日常生活とは、食事・睡眠・排泄など、基本的な生活動作のことを指しています。単なる生活動作とはいえ、動作一つ一つに対する人の感じ方はそれぞれであり、そう単純なものではありません。
個人の習慣や価値観、あるいは周囲の人からの影響など、様々な要素が複雑に反応しあって、その人らしい日常生活が形成されています。

介護士の仕事は、このような日常生活という極めてプライベートな部分にふれる以上、必ず求められる心構えがあります。それは共感的理解です。
高齢者の日常生活や、それを取り巻く環境をよく理解して共感しなければ、介護の仕事は始まりません。
高齢者との信頼関係を築くためには、相手の目線に立って、その置かれている状況や思いを想像し、その人に合ったケアをすることが求められるのです。

有名な心理学者のA.H.マズローによれば、人間には5段階の欲求があると言われています。
その中の基本的欲求である、自尊心や他者からの尊敬の欲求を満たすには、絶対に共感的理解が不可欠になります。

これは高齢者でも同じこと。自分に共感するどころか、蔑ろにするような人には、介護をして欲しくないのは当然でしょう。
また日常生活には、他人には見られたくない、知られたくない、あるいは触れられたくない部分も沢山あります。よほどの信頼関係がない限り、安心して介護を任せることはできません。
したがって介護の仕事をするにあたっては、共感的理解の心構えが大前提になるのです。